まずは言い訳を。
京都で老舗と言うと、創業何百年、とかじゃないと言っちゃダメ的なノリがあるけど、
とんかつはその歴史自体短いし(確か明治以降にpork cutlet、「とんかつ」って表記は昭和)、
創業60年の「とん漫」はとんかつの老舗と言っちゃっていいかなと。
とんかつの歴史。
東京は銀座の老舗洋食屋「煉瓦亭」が明治時代にpork cutletを出す。
それまでの牛肉から豚肉に変え、キャベツを添えて提供する。
その後、昭和に入り、これまた東京の「ポンチ亭」が肉を切り、味噌汁と漬物、という和定食スタイルで出す。
これが「とんかつ定食」として定着し、「とんかつ」が一般的になった。
というわけで、「とんかつ」はけっこう関東の食べ物。
実際、京都や関西では牛肉信仰が強いですねー。
鳥も好きだけど、豚は優先順位低い感じは否めない。
さらに、「牛カツ専門店 勝牛」や、京都のちょっと気の利いたバーとかで出す牛カツサンドに代表されるように、
肉の真ん中がレアの赤でグラデーションで外側に向かうほど、火の入ったグレーになる調理法が多いなー。
ほぼこれ。一辺倒。ま、見た目もいいし、いいんだけどね。
ちょっと偏愛っていいぐらい好きな気がする。その分、豚は下に見てる感あり笑。
そんな中で、「とん漫」さんがとんかつ専門店を60年もやって来たのは、並大抵の努力じゃなかったでしょう。
実際、ちょっとお客さん少ない?
とある平日のお昼休み。最寄り駅は京都市役所前駅で徒歩5分ぐらい。
富小路通り姉小路下ルにある店の前のメニューをなんとなしに眺めていると、
お店の女将風のおばあちゃんに声をかけられる。
ま、他に特に目星があるわけじゃないからいっかーと中へ。
それにしても、こんなおばあちゃんが客引きするなんて、なかなか大変そうだなーと思ってしまった。
京都の一等地だし。と、よく見たら隣の店も「とん漫」。
こっちはカジュアルラインか?
この一等地でこれだけの敷地を保つにはかなりの売り上げが必要では?
通りから、京都らしい入り口が人一人分の幅の小路を通って、奥へ行くと町家風の店構え。
これはかっこいい。
中は照明をやや落とした落ち着いた雰囲気。いい感じだー。
喫茶店として営業したら、なかなかシブいし隠れ家感もあってウケそうだな。
店内は初老系の背広組が一組。
まーお値段的にも決して安くないし、客層は高め。
会社の重役達が穏やかなランチを過ごすのに良さげ。
テーブル周りの清潔で華美な装飾もなくおじさん好み。いいね。昭和だね。
が、けっこう女将さん風のおばあさんがやってくる。
ほっといてもらっていいんだけどなー。
で、とんかつ定食1200円を注文する。
はい、こちらとんかつ定食。昭和な感じがいい。なんていうか料理の佇まいがいい。
サクサクっとしてそうな衣がいかにもご飯に合いそうだ。
いただきまーす!
サクッ! スカッ!!
うそ? 超、肉ウスい。。マジかー。出たよ京都スタンダード。
確かに見た目も「昔の日本人は体小さかったし、これぐらいの量だったのかなー」感はあったよ。
でも、せめて、とんかつは厚さだけでもちゃんとしようよー。
絶対的に量の少ないランチ、決定。
味もまあ。。昔のとんかつってこんな感じだったのかな。。
いわゆる肉厚のロース肉がギュッと噛みしめる、脂の甘みギュッとほとばしる!ていう系じゃない。
なんていうか、役所の社食的なとんかつ、というか。
ホテルの配膳人のバイトが、ホテルの地下の社食で食べるとんかつというか。
品がある味、と言われればそうなんだが、いかんせん肉の薄さが、
バイト時代の社食を思い出させる。個人的には。
初老の方とかには合いそうなとんかつですけどね。
帰り際、女将さん風の方に、「この近くで働いてるの? 同僚の方も誘ってどうぞご贔屓に」的なことを言われる。
なかなかグイグイ来るなー。やっぱりしんどいのかな。
とん漫
TEL.075-241-1818
京都市中京区富小路通姉小路下ル
11:30~14:00
19:00~21:00(LO/20:30)
定休日:日曜