京都の味の王者「くずきり」を擁する「鍵善良房」は文人たちの美術館のようでもあります。
京都は祇園、享保年間創業で300年の歴史を誇る京菓子の店「鍵善良房」。
京都の他の和菓子屋さん比べ、どことなく洒脱な雰囲気があるのはやっぱり祇園という土地柄だと思う。
茶道での和菓子だったり、京都御所と関わりの深い和菓子屋さんとはちょっと違う感じ。
祇園界隈の旦那衆からご贔屓にされた感じが「鍵善良房」を他の京菓子店と一線を画してる。
そんなおしゃれな老舗らしさがすでに玄関から出ちゃってます。
まず、「くずきり」の字を書いたのは明治の陶芸家、河合寛次郎。
その額縁は昭和を代表する漆芸家、黒田辰秋。
さらに暖簾は同じ祇園にある人気のかばん屋さん「一澤信三郎帆布」製。
新旧のアーティスト、職人さんたちの技、美術品を取り入れていく姿勢、さすがです。
「鍵善良房」への行き方は祇園四条駅からそのまま四条通りを東に進んで徒歩5分。
店内に入ると今度は店名が小説家、武者小路実篤の書。
次々と貴重な作品があちこちに登場してしまいます。
もはやお菓子を食べに来たのか、博物館に来たのか、よくわからなくなってしまいます。
このあたりの工芸品ももはやヤバいです。
内装を親しかった人間国宝の黒田辰秋に任せようとしたそうで、とにかく文人、墨客との繋がりが深い「鍵善良房」。
当時は文化人たちのサロンのような場所になっていたそうです。
おっと、そうだった和菓子の店だった!
と思い出させてくれる干菓子の道具。
これはこれで美術品のよう。
干菓子もきれいだなー。まるで美術品のよう。
宝石店のようだ。
干菓子は日持ちもするし、京都のお土産としてもいいですよね。
と、美術館巡りをそこそこにやっと本来の目的を思い出し、奥の喫茶室へ。
古きよき日本の美と現代建築の美を融合させた空間。
老舗にあぐらかかない感じがよいです。
お通しのように干菓子が出てきます。
これも「鍵善良房」名物のお菓子、「菊寿糖」。
徳島特産の砂糖の高級品、和三盆を使用してます。もう、そりゃそうだろうな、って気分です。
このお店ならまったく驚きません。
口どけすっきり。甘さもやさしい。ほわあって感じ。
出ました、「くずきり」。
作家の水上勉をして「くずきりは京の味の王者だと思う」と言わしめた一品。
シンプルできれい。つるんとしたのどごしは吉野葛の成せるワザ。
葛、黒蜜、水だけというシンプルさゆえに、それぞれの素材の味が際立ちます。
黒蜜が濃厚で美味いんだよなー。黒糖は沖縄のものを使用。
素材選びも日本中から探し出した一品ぞろい。
つるるん、ぷるるん。なんか浸された水ですら甘く感じる。
吉野葛は奈良、吉野の大宇陀町「森野吉野葛本舗」のもの。
これ以上ないさわやかなスイーツだなー。
食べてると滝のマイナスイオン、清流の涼やかな流れを感じます。※あくまで個人の感想です。
個人的に和菓子の中で清涼感一位だな。
和菓子屋さんでほぼ必ず頼むわらび餅。四条本店限定。うーん美味い。
草の香りが鼻腔を抜けていくー。
祇園の街中にいながら、滝のしぶきを浴びて、川下りをして、野原を駆け巡ったような爽快感。
あー和菓子っていいね。
鍵善良房 四条本店
京都府京都市東山区祇園町北側264
075-561-1818